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前代未聞のブルーノート事件

生まれて初めて、ブルーノートに行った。

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ブルーノート
数々の伝説に彩られた名門ジャズ・クラブ“ブルーノート”。
そのN.Y.のホットな空気をそのままに、
1988年11月、ブルーノート東京が青山に誕生。
本格派ジャズクラブとして、いまや我が国のジャズのメッカのひとつに。
(ブルーノート東京HPより)
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ずっと、そのお店の存在を知らずにいたが、
広島の友人から、
ブルーノート東京でプロポーズされた素敵なエピソードを聞き、
(しかも、歌い手も一緒に祝ったという!)
初めて「ブルーノート」なるものが、
神聖で、なおかつロマンチックな場所であることを理解した。

そしてこの日、
友人リコとブルーノートに出掛けた。
アンジー・ストーンの舞台を観に行ったのである。
ファーストステージは19時スタート。整理券が15時に配られるので、
学校が終わると、ブルーノートに直行して列に並んだ。
場所が場所だけに、セレブっぽい客が多い。
スーツをピシッと着こなした紳士、
毛皮を今風に羽織る女性。
支払い時のクレジットカードは、もちろんゴールド。
黒服の従業員は、卒なく黙々と支払い作業をこなしていく。
その振る舞いが落ち着いていて、この場の格調高さを際立たせていた。

整理券9番を持つ私たちは、17時半の開場と同時に中に案内され、
ステージ目前の席に付く。
臨場感がたまらないだろうナ、と考えただけでゾクゾクしてきた。
リコと好き放題話し、時間は矢のごとく経っていく。
飲食代は別なので、シーザーサラダとポロネーゼのパスタを注文。
ブルーノート東京オリジナル・サングリア「サマータイム(1000円)」を頼むと、
それだけでセレブな気分が味わえてくるのが不思議だ。

19時スタートのはずが、既に30分遅れていた。
(なんかいやな予感・・・・・)
そして遂に、バックコーラスや演奏者がぞろぞろ舞台に立ち始めた。
彼らに遅れて、真っピンクのシャツを着たアンジーストーンが登場。
失礼ながら、実物と、写真やレーベルから推察される体格とがかけ離れていて、驚いた。
リコは「スイカみたい」と上手く言い当てていた。

さぁ、アンジーが歌いだす。
バックコーラスとハモって・・・

「え?」

これから、というときにアンジーが突然舞台を降り、
近くにいた責任者に耳打ちし、
この場を去っていってしまった。

会場の全員、「??????」
5分、10分、待てどもアンジーは出てこない。
「アンジーが喉に違和感を感じまして・・・」
「もう少しお時間をいただくと復活いたしますので、しばしお待ちくださいませ」
とアナウンスされた。
それでも30分過ぎる頃・・・
あちらこちらで給仕するスタッフに、客が次々質問する。
「一体どうなっているのか?」
「彼女は本当に歌えるのか?」
決まって、スタッフが回答するのは
「あと5分くらいで戻ってくるようです」の一点張り。
彼らの耳元にある小さなマイクで、そう説明するように連絡が入っているのだろう。
その5分が10分、15分と過ぎていく。

リコと二人で、
次のステージも迫っているし、もうダメかもね、と半ば諦めた。
このとき気になるのは、ただ一つ。
お金は払い戻してくれるのだろうか。

会場の客が、ぞろぞろ帰り始めた。
すると、ブルーノート東京の副支配人がステージに立ち、
このトラブルについて説明をした。
「医者に診てもらったのですが、喉の違和感を取り去ることはできず、
前代未聞ではございますが、本日はライヴを中止いたします。」
「昨日の調子は大丈夫だったのですが・・・」
「本日のセカンドステージも中止です。明日のステージもほぼ満席でございますが、
明日また電話予約をしていただきますよう・・・」
「チケットを払い戻しいたしますので・・・」

席を立つ客が一気に増える。
払い戻しのレジは長蛇の列。

よく考えてみると、
整理券を取りに行く手間だとか、4時間超の拘束だとか、
チケットの払い戻しだけでは割に合わない気もする。
とはいえ、
ブルーノート東京側にしてみても、
何も落ち度がなく、この日の興行収入が消えてしまうわけだから、
不可抗力ということか。

チケット代は無事払い戻しされ、
飲食代として一人約3500円を支払い、店を出る。

なんだかなぁ・・・・・

メインディッシュを食べれなかったような微妙な空腹感。
何が悲しいって、
「ブルーノートどうだった?」と尋ねられても、
胸を張って感想を伝えられないという無力感。
アンジーの声も一瞬だったし、こればかりはどうしようもない。
「パスタはなかなかだったし、ドリンクも美味しかったよ・・・」
くらいしか言えない自分が悲しい。

リコと二人で、
「でもさ、前代未聞というほど、滅多にない出来事だったんだよ、
これって、ある意味、私たち運がよい、ってことになるよね?」
と結論付けた。
それと同時に、次回リベンジしようと、固く誓いあった。
by miyarinco | 2005-03-27 17:50 | 日常


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